幸せのスパイス
「これは…お前が作ったのか?」
「はい。でも、少し失敗しちゃって…辛かったらごめんなさい」
「べ、別に俺は辛いのが苦手なわけではないからな!勘違いするな!」
ヒューズさんは目を吊り上げるとスプーンで掬いパクリと口に入れる。口を動かしながら、彼の表情は戸惑いの滲むようなものになっていった。
「…………」
「もしかして美味しくありませんか…?」
「いや、そうではない。美味いが…不思議な味がするのだ」
「不思議な味?」
「ああ、この感覚は…懐かしいな。母上が俺の誕生日に作ってくれたケーキと同じだ…そうか、これが幸せの味なのだな」
そう言って彼は優しい微笑みを私に向けた。
「アステル、俺の誕生日に好きなものを作ってくれて、共に過ごしてくれて、感謝する」
「ヒューズさん…私も、すごく幸せです。一緒にいてくれてありがとうございます」
「……なあ、アステル」
「どうしましたか?」
「隣に座っても良いか?お前の顔を見るのも悪くないが…今すぐお前に触れたい」
「はい、私も同じ気持ちです」
ふたり肩を並べて食べたカレーは甘くて胸がいっぱいになる味だった。