固く埃っぽいベッドから身体を起こすと鈍い頭痛と吐き気が襲う。横の女の名前は忘れた。
『酒』と『女』と『ギャンブル』
人生狂わすんだからどんだけ良いものかと思えば大したこともねえ。グラスのヒビから全部漏れ出ちまう……元々割れたガラクタな気もするが。クソったれの日常も自分も、何一つ変えてくれやしなかった。
女の顔は葬式みてえに白いブランケットで覆われている。黒と亜麻色の境目を見ながら枕元に財布を放り投げた。名前を思い出すことはもう一生ねえんだろうな。
宿の外に出ると曇天の空と湿った空気が纏わりつく。カラッポの懐が乾いた音を立てた。
「ふわ~あ…だりぃ」
酒場に行くか。俺には金が無いからな。
絶好のギャンブル日和ってか?