雨と夢
遠くから雨の音が聞こえる。ゆっくり瞼を開くと時計の針はまだ明け方を指していた。体を起こし薄っすら光るカーテンの方を見ていると、隣に寝ていたミュゼルカさんも目を擦りながら起き上がる。
「ふわぁ…アステルさま、おはようございます……」
「起こしてしまってごめんなさい。まだ寝てても大丈夫ですよ」
「はい…もしかして、怖い夢を見ましたか?」
「いえ…今、ミュゼルカさんが大人になる夢を見ていました」
「そうだったんですね。アステルさま、大人になったボクは……やっぱりなんでもないです」
ミュゼルカさんは目を逸らして口ごもり、二人の間に沈黙が流れる。彼がベッドを出てカーテンを開けると鈍い灰色の空からは滴が落ちていた。
「久しぶりに雨が降って、きっとお花さん達も喜んでますね」
「そうですね。マーガレットもそろそろ咲きそうで楽しみです」
「ボク、今年初めてのマーガレットが咲いたら一番にあなたに見てほしいです」
「ふふっ、フリージアも、スミレも、ミュゼルカさんが育てているお花は全部最初に見せてもらってますよ」
「はう…ごめんなさい、また言ってしまいました。全部、あなたに見てもらいたくて……」
私もベッドから降り、彼を後ろから抱き締める。サラサラの髪からお揃いのシャンプーの香りがふわりと鼻をくすぐった。背はまだ少しだけ私の方が高いが、きっとすぐに追い抜かれるのだろう。
「ひゃあっ!びっくりしました……」
「ミューさんありがとうございます。とっても嬉しいです」
「えへっ、ボクも嬉しいです…大好きです、アステルさま」
窓際で私たちはそっと唇を重ね合わせる。何度も啄む内に深くなっていった。
「んっ…アステルさま…好きです……」
「私も…大好きです……」
指を絡ませ、舌先を触れ合わせながらベッドに腰掛ける。ミューさんは少し頬を赤らめ潤む瞳で私を見つめた。透き通るような白い肌に、サファイアの大きな瞳を長いまつげが縁取る。まだあどけなさは残っているが、近い将来夢の中の王子様と重なるのだろう。
「アステルさま、じっと見つめてどうかしましたか?」
「あっ、ごめんなさい」
「いえ、なんだか元気がなくて気になってしまいました……」
「実は…夢の中のミュゼルカさんがすごく素敵だったので、私が恋人でいいのかなって……」
「ええっ!ボク…そんなに信用ないんでしょうか……」
「ち、ちがいます!ミュゼルカさんは私をずっと大切にしてくれるってわかってます!わかってるんですけど…きゃっ」
ベッドの上に身体が仰向けに倒れる。ミュゼルカさんは天井を背にし、凛々しい顔で私の瞳を覗き込んでいた。
「あなたを不安にさせないように、ボクはもっと愛を伝えていかないとダメってことですね」
「ミューさん……」
「愛してます。アステルさま」
白く細い指で胸のボタンを外され、衣擦れと雨の音が単調に奏でられる。服の隙間からひんやりとした朝の空気が流れ込むが、すぐに彼の温かいキスが降ってきた。ミュゼルカさんの小さな手は壊れものを扱うように私の曲線をなぞりつつ、胸の尖りを口に含んで転がす。
「んっ…♡はぁ…あっ♡」
「ふふ、朝だからアステルさまのお顔がよく見えますね。あっ、隠さないでください」
「でも……」
「あなたの肌が薄いピンク色に染まって…とても可愛らしいです。アステルさまのお花にも触れていいですか…?」
「はい…♡」
彼は下着を降ろし、ゆっくり足を開かせる。花びらを愛でるようにそっと撫でられ、じわりと蜜が滲んだ。
「柔らかくてあったかいです…あっ…お水が出てきました……」
「そんなに見られると恥ずかしいです…んっ♡」
「恥ずかしがってるあなたも好きです…えへっ。つぎはボクの舌で…んっ…アステルさまのお水…甘くて…なんだか不思議な気持ちになります……」
「ああっ♡やっ♡はぁ…はぁ…あっ♡」
ミュゼルカさんは指を入れて折り曲げ膣内を刺激しながら、割れ目を開きクリトリスを舐める。舌先が押し付けられる度に全身に電気が流れ、下腹部が痙攣し愛液が溢れた。
「あっ♡ミューさん♡そこはだめ♡」
「んっ…あなたのつぼみ…小さくて…可愛らしいです……」
「んっ♡もう♡はあ♡あっ♡ああっ♡」
ビクンッビクンッ
頭の中が真っ白になり腰を浮かせて達する。ミュゼルカさんは頬を上気させ、手で下半身を抑えもじもじと身体を揺らしていた。
「はあ♡はあ♡」
「アステルさま……」
「あの…私もミュゼルカさんの舐めてもいいですか?」
「えっ…は…はい……」
私は彼の白い太腿の間に顔を埋め、カウパーを垂らし震えるペニスを咥えた。舌先で丸い先端を舐め回し、固くなった陰茎を根元から吸い上げ唇で扱く。
「ふわぁ…アステルさまのお口の中あったかいです……」
「んっ…気持ち良いですか?」
「あっ…とっても…気持ちよくて…頭がぼーっとしちゃいます…ひゃあ!そんなところまで…ふわ…ダメです……」
「ふふっ、ミューさんの…んっ…おいしいです。いっぱい舐めてあげますね……」
「はうっ…アステルさまに食べられてしまいました…あっ、待ってください…!出ちゃいます…!だ、ダメです…ああっ!」
ビュルルッ
ミュゼルカさんは目をギュッと瞑り身体を丸めて精を吐き出す。彼は熱っぽく息を漏らすと潤む瞳で私を見つめた。
「はぁ…ボク、もうがまんできなくて…アステルさま、いれてもいいですか?」
「ミューさん…はい、来てください」
濡れた膣口にペニスがゆっくり挿入され、甘美な快感が広がる。私たちはそのままじっと動かず抱き合い、ナカが彼の形になっていく。
「んっ…アステルさま、身体はつらくありませんか?」
「大丈夫ですよ」
「無理はしないでくださいね。んっ…はぁ…はぁ…あっ、アステルさま……」
グチュ、グチュ、ヌチュッ、ズチュ
彼のペニスが壁を擦り、蜜をかき混ぜる。優しく突かれるとお腹の奥に響き、口から掠れた高い声が零れた。
「あっ…んっ♡ミューさん♡んっ♡」
「はぁ…はぁ…アステルさま…あったかいです…気持ちよくて…溶けちゃいそうです…このままあなたとひとつになれたらいいのに……」
「ミューさん♡好きです…はあ…あっ♡んっ♡」
「アステルさま…ボクも大好きです…あっ…また、出ちゃいそうです……」
「んんっ♡はあっ♡私も♡イきそう、です♡」
「ボクも、んっ…アステルさま…一緒に…ああっ」
「ああっ♡♡」
ビュルッビューーッ
ビクッビクンッッ
彼の白濁液が注がれ子宮を満たす。私は最後の一滴までねだるように足をミューさんの腰に絡めた。
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「雨、止まないですね」
「そうですね…でも、あなたと一緒だと雨の音が心地よく聞こえます」
「ふふっ、私もそう思います。雷は苦手ですけど……」
「はう…ボクも雷は苦手です……」
雨がさらさらと落ちる静かな水音だけが二人の間に流れる。私はまた段々と微睡みに沈んでいく。
「アステルさまは…大人のボクの方が好きですか?」
「どんなミューさんも大好きですよ」
「えへへ…うれしいです」
「いくつになっても、ずっと一緒にいましょうね」
「はい。ボク、とっても幸せです……」
手を繋いでくすくす笑う。雨が上がるまでのもう少し、私たちは目を閉じた。