いっぱい食べるあなたが好き
サシャさんが私の部屋に遊びに来ると聞いて、私は彼のために手料理をふるまうことになった。彼は12時より少し前に訪れ、私に有名店のスイーツのロゴの入った箱を渡す。私は子どものように目を輝かせる彼の前に次々と料理を並べ、最後にカラフルな三本の瓶を置いた。
「わあっ、どれもおいしそうですねー。これはソースですかー?」
「はい。サシャさんの好みの味が分からなくて…お店でめずらしいのを買ったので、よかったら使ってください」
「ありがとうございますー。それから、実はあなたにお願いしたいことがあって…あーんってしてくれませんかー?」
「えっ…!あーん、ですか?」
「はいー。恋人みたいで憧れていたんですー」
「わ、わかりました。あーん……」
「あーん」
オムライスをすくっておずおずと差し出すと、サシャさんの口の中に吸い込まれていった。
「もぐもぐ…はー、とっても美味しいですー。なんだか幸せな味がしますね」
「幸せな味ですか?」
「はいー、あなたが僕を思いながら作った優しい味です」
「サシャさん…ありがとうございます。嬉しいです」
サシャさんは一つ一つ味わいながらニコニコと美味しそうに食べてくれる。張り切って作りすぎてしまった料理もあっという間に無くなっていた。
「ごちそうさまでしたー。すごくおいしかったですー」
「ふふっ、喜んでもらえて良かったです!」
「ただ、あなたが買ってくれたソースを使わないのは、なんだか勿体ないですよねー…少し、味見してもいいでしょうかー?」
「もちろんです」
「じゃあ、失礼しますねー」
サシャさんは瓶の蓋を開けてなぜか私の手を取る。まるでダンスのはじまりのような手を見つめていると、とろりとイエローのソースが指にかかった。
「きゃあっ!」
「ふふ、びっくりさせちゃいましたねー」
「サシャさん、食べ物で遊ぶのは駄目ですよ!」
「いいえー、遊んでいませんー。いたってこれは真面目で、あなたの身体と一緒に味わうことできっと未知の発見があると思うんですー」
そう言ってサシャさんは私の人差し指に口を寄せ、ぱくりと咥えた。生温かく濡れた彼の腔内に包まれ指の腹に舌が這い、じっくりと舐めしゃぶられる。快さと不快さが混ざり合い、ぞわぞわと背筋が震え頬が一気に火照った。私は恥ずかしさに耐え切れず顔を逸らし、必死に声を押し殺す。
「ふむふむ…これはレモンの酸味と生クリームのコクがありますねー。あとは卵黄も入っているのでしょうかー」
「んっ…サシャさん…そんなに舐められると……」
「おいしいですねー…ソースも、あなたの指も」
サシャさんはやっと私の指を解放し、悪戯っぽく微笑む。アールグレイの瞳は熱く潤んでいて、私たちはどちらからともなく唇を重ねた。ゆるく開かれた歯列の隙間から彼の舌先が滑り込み、舐め合い軽く食まれる。苦しくて痺れるような甘さにくらくらと頭が揺れた。
「…っ、サシャさん……」
「あなたとのキスもとっても甘くておいしいですー。ふふっ、あなたの頬もリンゴみたいに真っ赤でおいしそうですねー。デザート、食べてもいいですか?」
****
サシャさんは両手に二本の瓶を持ち、眼鏡と一緒にベッド横のチェストに置いた。
「サシャさん…もしかして……」
「まだ二種類残ってますし、場所の違いで味も変わると思うんですー」
「もうっ、やっぱり…!」
私の上に覆い被さる彼にニッコリと微笑まれ、私は頬を膨らませるしかできなかった。露わになった私の胸元にソースが垂れ落ち、冷たさに思わず波打つ。谷間を流れるライトグリーンに、サシャさんは舌を伸ばした。
「きゃっ…!」
「ふむふむ、これはミントの香りですねー」
「あっ♡ま、待って♡」
「んー…白ワインとビネガーの酸味が効いていて…興味深い味ですー」
「やっ♡そんな♡舐めちゃ、駄目です♡んっ♡」
「でも、このつぶつぶはわかりませんねー。何かの種なのでしょうかー?」
乳房の薄い皮膚の上を弱い刺激がなぞる。感じすぎるところを避けるようにじりじりと焦らされ、体温が上がっていく。私は秘所が疼き愛液が滲むのを感じ、膝を立て太腿を擦り合わせた。
「あっ♡くすぐったいです♡んっ♡サシャさん♡待って♡」
「ふふ、つい夢中になってしまいましたー。あー、ソースがお腹の方まで垂れてしまっていますねー」
「やあっ♡はぁ、んんっ♡」
「はぁ…あなたの肌が甘く感じるのは…なぜなのでしょうかー…んっ…不思議ですー」
「っ…サシャ、さん……」
「あれー、もう我慢できなくなっちゃいましたかー?」
「うう…意地悪しないでください……」
「あなたの困った顔がかわいらしくて、ついやりすぎちゃいますねー。最後はもちろんここですー。かける前からとろとろでおいしそうですねー…一体どんな味になるのでしょうか…いただきまーす…んっ……」
甘ったるい香りを放ちながら、三つ目のソースが下腹部から濡れた割れ目へ垂れ落ちる。サシャさんの舌先もそれを追いかけ、窪みに潜む花芽に塗り込んだ。穏やかな優しい愛撫が内部に熱を溜め、私は快楽に追い詰められた身を捩らせる。
「んっ…やっ、ああっ♡」
「はー、これはフルーツとはちみつですねー。ふむふむ…桃と…洋梨も入っているようですー」
「きゃっ♡あっ♡サシャさん♡だめ♡」
「はぁ…なんだか頭がクラクラしてきましたー。これはソースが原因なのか…それとも……」
「あっ♡もう、や、あ、いっちゃ…ああっ♡」
ビクッビクッ
注がれ続けたグラスからついに水が溢れるように、膣口を締め付け不意に私の身体は絶頂を迎えた。
サシャさんは丁寧に蜜を舐め上げ、蕩けるような心地よさが続く。
「やっ♡サシャさん♡待って♡あっ♡はあ…はあ…ああっ♡」
「ん…すごくドキドキして…とっても甘くて…はー、クセになってしまいそうですー」
「うう…ダメ…なのに……」
「アステルさん…僕も我慢できなくなっちゃいましたー…あなたと…繋がってもいいですかー?」
サシャさんの硬くなったペニスが、割れ目にヌルヌルと擦り付けられる。私が小さく頷くと剛直が熟れた肉の間を進んでいく。膣内は待ちわびた刺激にペニスを柔らかく包み絡みついた。
「はぁ…あなたのナカ…なんだかいつもより温かい気がしますー」
「サシャさんのも…熱いです……」
「ふふ、興奮…してるのかもですねー」
「…してるかも、しれません」
サシャさんの顔が近付き真っ赤な頬を撫でられる。鼻先が触れそうな距離で見つめ合っていると、二人の境目が馴染んでいく気がした。ゆっくりと膣内を擦られ奥を突かれる動きに、思わず腰が浮く。
グチュ、ズチュ、グチュッ、ズチュン、ズチュッ
「はぁ…はぁ…アステルさん…好きです…大好きです……」
「あっ♡サシャさん♡私も♡大好きです♡」
「ふふ、かわいい…あなたのそのとろけるような表情も…声も…瞳も…全部大好きですー…」
「私も♡サシャさんの♡全部が♡大好きです♡」
「ありがとうございますー…でも、今日の僕は…あなたにたくさん意地悪しちゃいましたー」
「好きです♡意地悪なところも♡優しいところも♡たくさん食べるところも♡全部♡大好きです♡」
「アステルさん…はー、嬉しいです…僕は幸せ者ですねー」
彼が柔らかい笑みを浮かべると胸の奥が温かく満たされる。早い鼓動に頬が熱を持ち、私もつられて自然と微笑んでいた。
「ふふっ…私もすごく幸せです」
「ふふ、あなたのその言葉でもっと幸せになりましたー。愛していますよ…僕の可愛いアステルさん…はぁ…はぁ…んっ……」
「サシャさん♡好きっ♡あっ♡私も愛してます♡」
「はぁ…はぁ…好きです…愛してます…あったかくて…気持ちよくて…もう…出てしまいそうですー……」
「私もです♡ああ♡んっ♡いっ、イく♡」
「僕も…んっ…イきそうです…うああ!」
「ああっ♡♡」
ビュルルッビューーッ
ビクンッビクンッ
白濁液が放たれるのと同時に膣内が収縮する。頭の中はのぼせたように靄がかかり、時間の流れも遅くなっていく。サシャさんの指は私の前髪を寄せ、額にそっとキスが落ちた。
「今日は本当にありがとうございましたー。またぜひあなたの手料理が食べたいですー」
「ふふっ、私でよければいつでも作りますよ」
「わあっ、とっても楽しみですー」
「でも、食べ物で遊ぶのはダメですからね」
「はーい。次も真剣に、残さず全部食べますー…あなたも一緒に」