寝る時間になっても、私の恋人は隣にいてくれない。常に机に向かい、目と手を動かし続ける。
仕事の邪魔をしてはいけないと分かってはいるけれど、話すことも触れることも出来ず、ただ同じ空間で呼吸するだけなのは……別々の場所にいるより寂しかった。
「クロービスさん、見てください!寝間着を新しくしてみたんです。どうですか?」
「む…まあ…似合うのではないか。少々露出が多い気もするが……」
私がワンピース姿で話しかけると、彼は寝不足で霞む目を細め、眉間に皺を寄せそう言った。一日かけて選んだ服は一言で済ませられ、すぐに視線は机の上に戻る。
私もそれ以上続ける言葉が見つからず、モヤモヤとした気持ちを抱えベッドに横たわった。
「はぁ……」
「君、疲れているなら先に休みたまえ」
「クロービスさんが寝るまでは起きてます」
「はぁ…好きにしろ」
紙が擦れる音、筆の走る単調な音が睡魔を誘う。毎日気付けば眠りに落ちてしまっていて、目覚めた時にはクロービスさんはもう起きているか、寝ていないのだ。
でも、今日は眠りたくない。微睡みに抗っていると、クロービスさんの低く呻く声が聞こえた。
「むう……うっ」
「どうしました…?」
「いや、腰か背中をつったようだ」
「ええっ!大丈夫ですか?」
「夜中に騒ぐな、すぐ治る」
「あの…私、マッサージします!」
「はあ!?断る!」
「クロービスさんは最近働きすぎですし、今夜は寝ましょう」
「余計なお世話だ…!私にはまだ仕事が残っている。今眠る訳には…君!手を離したまえ!」
声を上擦らせ嫌がる彼の腕を掴み、私はベッドへ無理矢理引っ張る。彼はきっと本気で振り解くことも出来ただろうが、半ば引き摺られるように着いてきてくれた。諦めた表情でベッドに腰掛けるクロービスさんと私は、まるで休みの日の父親に遊びをねだる娘のようだ。
「クロービスさん、うつ伏せになって下さい」
「はぁ…わかった。君の言う通り仕事は終わらせて今日は休むとする。だがマッサージは必要ない」
「どうしてですか?」
「君も疲れているだろう。私などに構わず早く休みたまえ」
「疲れてません。マッサージは私がしたいんです!」
「理解できぬな…とにかく、必要ない」
クロービスさんは眼鏡を外し私に背を向け寝転んだ。彼の背中からは拒絶の意思が感じられ、何かが私の中で弾けて、気が付けば彼を無理矢理うつ伏せにさせ腰の上に跨っていた。
「なっ、君…何をしている!?早くどきたまえ…!」
「痛かったら言ってください!」
私はそう言って背中に手の平を当て、親指でぐりぐりと強めに押した。背骨に沿ってマッサージしていくが、どこも私の指が痛くなるほど凝り固まっていた。
「うっ…!むう…ぐっ……」
「凝ってますね…ここも、ここもすごく…固いです」
「そうか……んっ!」
「ごめんなさい。痛かったですか?」
「いや、痛くはないが……何でもない」
「……?肩の方もしますね」
背中の上に乗り、彼の白いうなじに触れ、首や肩甲骨の辺りを揉みほぐすと、ささくれ立っていた心が穏やかになっていく。自分はずっと彼の温かさに触れたかったのだと気付き、足まで一通り終える頃には嘘のように晴れやかな気持ちになっていた。
彼は最初こそ時折低く声を漏らしていたが、途中から指先一つ動かなくなり沈黙していた。
「ふう。クロービスさん、終わりましたよ」
「…………」
「クロービスさん?」
「はぁ…こうなる気がしていたのだ……」
彼はゆっくりと上体を起こす。彼のズボンの膨らみが視界に入った瞬間に顔が熱くなり、慌てて目を逸らした。
「あっ……」
「よいか、今日の君の言動は普通の男なら誘っていると勘違いさせるものだ。君にその気が無いのは知っているが、少々軽率すぎる。私と関係を進めたくないなら今後は慎むことだ……次は私も耐えられるか分からぬ」
「…どうして我慢するんですか?」
「ば、馬鹿者!私たちはまだ婚約もしていないのだぞ…!」
「でも恋人です。私はもっとクロービスさんと恋人らしいことをしたいです」
「君、自分が何を言ってるかわかっているのかね!?」
「わかってます!子ども扱いしないでください!」
「子ども扱いなどしていない!」
「してます!私にその気が無いって決めつけてるじゃないですか!」
驚き固まるクロービスさんの顔を見て一気に羞恥が押し寄せ、私は頬を赤らめ俯き口籠る。
「……ふっ、ははははは!」
彼は吹き出したかと思うと、前髪をグシャリと掻き、見たこともないほど大きく笑い始めた。
「く、クロービスさん…?きゃっ」
戸惑いがちに声をかけると、あっという間に押し倒され口を塞がれ角度を変えて貪られる。合わせるだけではない、初めての激しいキスに心臓が騒がしい。控えめに唇を開くと、彼の柔らかな舌先が私の腔内を舐める。
「はぁっ…本当に君は…いつだって私の言うことを聞かない。こんな不埒な格好で男を誘うなど…一体どこで覚えてきたのだ。まったく…けしからんな」
彼の低く掠れた声と温い吐息が耳に吹き込まれ、背筋がぞくりと震える。自分のではない大きな手が私の胸を包み込み揺れる。乳首を指先で軽く撫でられるだけで、お腹の奥が浮くような気持ち良さが生まれた。
「あっ…クロービスさん…んっ♡」
「先が固く尖って…服の上からでも分かるぞ?これも私に見せつけるためかね?」
「ち、違います♡んんっ♡指♡くすぐったいです♡」
「フッ、止めるか?」
「やめないでください……」
熱に浮かされたように小さく呟くと、クロービスさんは息を飲み私の胸元のボタンを外し始める。恥ずかしさに胸を隠そうとすると手首を掴まれた。
「隠すな。さっきまでの威勢はどうした?」
「クロービスさんのいじわる……」
「意地悪で結構。私を刺激するとどうなるか…君にはしっかりとわからせる必要がある」
彼の薄い舌が乳輪を這い、固くなった先端を温かい腔内で包まれる。優しく吸われ、舌先で押し潰されると全身に甘い痺れが走り、触れてもいない秘裂から愛液が滲んだ。
「ああっ♡んっ♡あっ♡」
「…っ…はあ…胸だけでこんなに感じているのか…困った娘だ」
「だって♡クロービスさんが♡」
「ほう…君は私のせいだと言うのかね。腰を浮かせ…太腿を擦り合わせて…ここが疼くのだろう?」
クロービスさんの手が太腿の間に差し込まれ、内腿を滑る。下着の上から割れ目に沿って指が食い込み、きゅっと膣口が閉じる。
「フッ、もうずいぶん濡れているではないか」
「んっ…恥ずかしいです♡」
「今更遅い。触れられたいと言ったのは君だからな…責任はとってもらおう」
「そんな♡あっ♡待ってください♡」
「…知らなかったか?私は意外と気が短いのだよ」
下着の中に手が入り込み、膣口に直接指先が触れる。表面を揉まれるだけで強烈な快感が生まれ、彼の指に自ら擦り付けるように腰が跳ねた。
「やあっ♡ダメ♡クロービスさん♡」
「何が駄目なのかはっきり言いたまえ…入り口を撫でるだけでこの反応か。どうやら君には才能があるようだな」
「あっ♡やあっ♡ああっ♡」
クロービスさんは揶揄いを含ませた声で囁きながら、長い指先をぬめる肉に深く食い込ませる。逃れるように身体を捩っても全身で密着し押さえ付けられた。
「ああっ♡入ってくる♡」
「むう…キツいな。緊張しているのか…力を抜きたまえ」
「んんっ♡はあっ♡」
「…余計に締め付けてどうする」
「ううっ……」
「少々手荒な真似をすることになるが…致し方あるまい」
彼の手が下腹部を滑り、秘裂に潜む小さな突起に触れる。これまでのじんわりとした快感ではなく、電気が走ったかのような鋭い刺激に背中が反った。
花芽を身体の内側と外側から擦られ、意識が飛びそうになり必死に彼の首に縋りつく。お腹の奥が震え、頭の中が真っ白になり、熱い吐息が漏れ出た。
「きゃあ♡そこ♡やあっ♡ダメ♡待って♡ああっ♡」
「…悪くはないようだな。中もよく動いている…そのまま何も考えずに感じていろ」
「は、はい♡あっ♡あっ♡ん…んんっ♡」
体温が上がり身体が浮く感覚が限界に近づいていく。遂に快楽が破裂しそうになる寸前、不意に指が抜かれ足の間にクロービスさんが割り入る。彼の白い肌は少し赤みがかり、眉間にシワを寄せ私を見つめていた。
「すまない、もっと慣らすつもりであったが…私も限界のようだ……」
初めて見る彼のペニスは上を向き、透明な液体で光っていた。こんなにも大きなものが自分の中に入るのを想像し私は息を飲む。
張り詰めた亀頭が宛がわれ、粘膜が同士が触れ合う。膣壁が引き剥がされ、焼けるような熱さに思わず目を瞑りシーツを握った。
「んっ…!」
「くっ、やはりまだ早いか……」
「あっ…待ってください…!」
「…無理をするな。また機会はある」
クロービスさんはそう言って静かに離れようとする。しかし、私が腕を掴み涙目で首を振るのを見て、彼は呆れたように溜息を吐き目を閉じた。
「本当に君は……仕方がない」
時間をかけて膣内に熱い肉棒が押し込められ、息が詰まり涙が滲む。身体は勝手にペニスを締め付けてしまうが、その度に彼は動きを止め、私の頭を撫でたりキスを落としたり、じわりじわりと優しく侵していく。
グチュッ…ズチュ…ヌチュ……
「…入ったか。アステル、顔を覆ってどうした」
「だって、初めてなのに…こんな♡」
「駄目だ。見せなさい」
「きゃっ」
手首を頭上でまとめられ、視線が交わり唇を奪われる。彼の舌が強引に捻じ込まれ歯列を割り、私の舌を捕らえる。夢うつつで彼の動きを必死に真似るとお互いの唾液が混ざり合い口の端から零れた。
「はあっ、あっ♡はあっ…あ♡んんっ♡」
「んっ…私は…君のどんな顔も…その…………可愛らしいと、思う」
「クロービスさん……」
「……あまり私の顔を見るな。はぁ…しかし、全く想定通りに進まぬな…我ながら実に情けない……」
「ご、ごめんなさい」
「いや…私には知識しか無いのだ…当然といえば当然か」
「でも、私今とても嬉しくて…気持ち良いです……」
「なっ…!」
クロービスさんは目を見開き固まった後、頬を赤く染める。私の太腿を抱えると更に奥まで陰茎を突き入れ、そのまま掻き回される。突かれる度に衝撃が重く響き、甘ったるい声が零れた。
「ああっ♡あっ♡んっ♡あっ♡」
「本当に君は…どこまで私を煽れば気が済むのだ…!」
「そんな♡あっ♡してないです♡んんっ♡」
「している…!私とて普通の男だ…性欲もある…!君を大事に想うからこそ耐えていたのだ…それを君は…!!」
グチュンズチュッバチュンパンパンパンッ
彼の表情も動きからも余裕は消えており、荒々しく下半身を打ち付けられる。子宮口を圧し潰され膣内は陰茎を強く締め付けるが、秘肉もろともカリで引き抜きまた押し戻す。
「あっ♡ああっ♡んっ♡ごめんなさい♡あっ♡」
「今さら謝っても遅い…!君の子宮を私の精で満たすまで…終わらせぬ…んっ、はあ…アステル…出すぞ…しっかり…受け止めたまえ…はあ…はあ…あっ、あっ…うああ!」
「ああ♡♡」
ビュルルッビューーッ
ビクッビクンッビクンッ
濡れた結合部が密着し、最奥に勢いよく熱い精が放たれる。深いキスを受けながら大量の白濁液が痙攣する膣内に注がれ腰が跳ねた。
「あっ♡クロービスさんの♡いっぱい出てる♡熱い♡」
「んっ……アステル、愛してる。ずっと私と共にいてくれ…君のいない生活には…もう戻れそうにない……」
私たちは体勢を変えながら夢中で何度も交わり続ける。私の身体は痛みや圧迫感の代わりに快感が増幅していき、素直に大胆になっていった。
「あっ♡クロービスさん♡好き♡ああっ♡そこ♡気持ち良い♡」
「はあ、はあっ、どうだ…私を煽るとどうなるか分かったかね?」
「はい♡わかりました♡ごめんなさい♡」
「フッ…分かって頂けたなら何よりだ。今後は気を付けるように……」
「あっ♡だめっ♡あっ♡んんっ♡」
ビクビクッビクンッ
達し続けた私の身体は力が全く入らず、内側を擦られる刺激で簡単に下半身をガクガクと震わせた。クロービスさんは私の様子を見て髪をかき上げながら小さく呟く。
「…少しやり過ぎたか」
彼が一向に萎える様子のないペニスを引き抜くと、膣口からは白濁液が垂れ惜しむように波打った。私は自分の太腿の裏を抱え、彼に見せつけるように拡げる。
「クロービスさん…もっとしてください…♡」
「はぁ…君、そういうところが駄目だと言っただろう。指導継続だ…!」
「あっ♡♡」
***
「おや、クロービス殿、何だか今日は顔色が良いですね?昨晩は姫と『情熱的な運動』でもしたんですか?」
「はあ!?リーンハルト、下品な言い方はやめたまえ!」
「あれれー、訂正するのは言い方だけで良いんですかー?」
「むう…し、失礼する!」
「…どうやら上手くいったようだね。セクシーな下着で誘うって俺のアドバイスが効いたのかな?」
「ふふっ、僕のリラックス作戦かもしれませんよー」